
生成AIが、提供していないサービスや古い所在地を自社の情報として紹介したら、どう対応すればよいでしょうか。まず必要なのは、その回答を会社の事実として受け入れることでも、すぐサイト全体を作り直すことでもありません。何を質問し、どの条件で、どんな回答が出たのかを残し、確認できる公式情報と照合することです。
「AIがそう答えた」という観測と、「会社が実際にそのサービスを提供している」という事実は別です。ここでは、広報・マーケティング・サイト管理の担当者が関係部署と確認を進めるために、残したい記録と初動を整理します。
まず、どの説明が違うのかを切り分ける
次の三つは説明用の架空例です。実際の顧客事例や診断結果ではありません。
- サービスの誤紹介:部品加工を行う会社について、AIが「設備の販売も行う」と答えた。現在の公式サービス一覧に販売の記載はない。ただし、記載がないだけで提供していないと確定せず、事業担当へ確認します。
- 所在地の誤紹介:本社を移転した会社について、旧住所が現在の所在地として表示された。現行会社概要と移転案内を照合し、旧住所が過去の情報なのか、別拠点として現在も有効なのかを確かめます。
- 同名企業の取り違え:社名は一致するが、地域・事業・公式ドメインが別会社のものだった。名前の一致だけで自社への言及と数えず、どの企業を指す説明か確認します。
どの例でも、回答の出所や原因を最初から決めつけません。「説明が公式情報と食い違っている」「担当部署の確認が必要」と、確認段階に応じて書き分けます。

1.質問文と直前の会話
入力した質問を省略せず保存します。社名を指定したのか、地域や業種から候補を探したのかで、確認したい内容は変わります。「当社を調べた」という要約だけでは、後から同じ質問で確認できません。
直前の会話、添付した資料、会社名について補足した内容も、回答を理解するのに必要な範囲で残します。新規の会話か、続けていた会話かも記録しましょう。元の会話を確認できなければ「直前の会話は保存なし」と明記します。
社内共有では、顧客名・個人情報・機密の製品情報を不要に広げないことが大切です。元の記録は必要な担当者だけが参照できる場所へ保存し、説明用の共有版では該当箇所を伏せます。伏せた版と元の記録を混同しないようにします。
2.回答の原文
問題の一文だけでなく、前後の説明と回答に付いた参照情報を残します。コピーできる原文に加え、画面のスクリーンショットがあれば、表示状態の確認にも使えます。回答が複数候補を挙げていた場合は、どの候補の説明か分かるようにしましょう。
自分の要約や指摘は、原文とは別欄へ書きます。「間違い」と書き込んだ文章を、そのままAIの原文として提出しないでください。一部しか保存できなかった場合は、「この箇所のみ保存」と範囲を示します。
スクリーンショットに他の会話やアカウント情報が写り込んでいないかも確認します。外部へ相談する際は、共有に必要な部分と、伏せる部分を担当者と決めます。
3.サービス名と確認できるモデル情報
使ったAIサービス名と、画面で確認できるモデル名・版を記録します。会社の契約プランや利用画面が分かる場合も、必要な範囲で付記します。サービス名が同じという理由だけで、過去の回答と同じモデルだと判断しないようにします。
詳細が表示されない場合は「モデルの版は確認できず」で構いません。ネット上の推測や、回答の文章の雰囲気から補う必要はありません。監査で比較する際も、確認できる情報と不明な情報を分けます。
4.検索の利用と設定
Web検索を利用したか、検索を使わない回答かを、画面や設定で確認できる範囲で記録します。参照リンクが付いていることだけで、どの検索設定が使われたかまで確定しません。
回答言語、添付資料、選択したモードなど、分かる設定も残します。設定を後から確認できない場合は「検索利用は確認できず」と書きます。再確認で条件を変更したら、変更した点を別に記録します。違う条件で回答が変わっても、その差を自社サイトの改善効果と決めつけません。
5.観測日時と引用元
日時はタイムゾーンを含めて記録します。回答を取得した日と、社内でその内容を確認した日は別にします。保存したファイル名にも日時を付けると、別の回答と取り違えにくくなります。
回答に示された引用元URLと、実際に開いて確認したページのURL・内容・確認日時を分けて残します。リンクが開けない、該当する記載が見つからない場合も、その状態を記録します。AIがURLを示しただけで、ページの実在や説明の正しさを判断しません。
サイトを開いた際に別ページへ転送されたなら、最終的に確認したページも記録します。参照元の内容が後で変更される可能性もあるため、共有・保存してよい範囲で該当記載を残しましょう。
不審なURLや認証・ダウンロードを求めるリンクは、無条件に開かず社内の安全確認手順に従います。確認できなければ、無理にアクセスせず「内容未確認」と記録します。
見比べる公式基準を決める
会社概要、サービス紹介、移転案内、公開資料などから、対象の説明を確認できる資料を選びます。複数の公式ページが食い違う場合は、どちらかを勝手に正解とせず、管理担当や事業担当へ確認します。
整理する欄は「AIの回答」「確認資料の記載」「担当部署の確認結果」「未確認事項」です。所在地なら会社情報の担当、サービス範囲なら事業担当が、現在の事実を確認します。公式サイトの更新が遅れている可能性も含め、根拠が確かになるまで結論を保留します。
コピーして使える記録メモ
次は相談や社内確認のための記入例です。必須申込項目ではありません。分からない欄は「未確認」と書き、秘密や不要な個人情報を入れないでください。
確認したい会社・サービス:
対象の公式サイトURL:
質問文:
直前の会話・添付資料の有無:
回答原文の保存先・保存範囲:
AIサービス/表示されたモデル情報:
検索の利用/分かる設定:
観測日時・タイムゾーン:
回答に示された引用元URL:
実際に確認したページ・確認日時:
食い違う説明と確認資料の記載:
担当部署の確認結果/未確認事項:
共有版で伏せた情報:
次に確認する担当・内容:
関係部署の初動と、改善後の再確認
最初に窓口を決め、同じ原文と記録を関係者が確認できるようにします。広報・マーケティングは対外説明への影響、事業担当はサービスの事実、サイト管理者は公開ページの状態を確認します。権利や個人情報などの問題がある場合は、必要な専門担当へ相談します。
公式情報を修正する場合は、ページ・変更内容・実施日を残します。AIサービスへの報告手段を使う場合も、適用される案内と共有情報を確認します。報告や修正をしたことと、回答が訂正されたことは分けて管理してください。
再確認では質問や設定を可能な範囲でそろえ、モデルや日時の変化も記録します。一つの回答が改善しても、他の質問やAIでも同じ結果になるとは限りません。情報を直せばすぐ反映される、誤紹介が完全になくなる、と約束しないことが重要です。
やってはいけない判断
一回の回答だけで全体を判定しない。AIが述べた内容を会社の事実として引用しない。情報源が未確認のまま、別会社や制作会社を原因と決めつけない。回答が変わっただけで、売上や推薦への効果を実証したと扱わない。この四つを社内の共通ルールにしましょう。
よくある質問
Q.引用元がない回答でも記録できますか?
A.はい。「引用元は表示なし」と記録し、質問・原文・観測条件を残します。引用元を推測で作らないでください。
Q.翌日に正しい回答が出たら、問題は解決ですか?
A.その条件で正しい回答を確認したことは記録できます。ただし、すべての回答の解決とは別です。質問やモデルなどの違いも確認します。
Q.公式情報を整理すれば、必ず訂正されますか?
A.保証はできません。整理した内容と対応日を残し、変化を確認するための材料にします。
Q.どこまで準備して相談すればよいですか?
A.対象サイトと気になった説明からで構いません。記録が不足している場合も、分かる情報と未確認事項を分けてお聞かせください。
記録を、改善の判断につなげる
PtoB株式会社が扱うAI企業健康診断では、人間の担当者がAIの回答や情報源、サイトの課題を監査し、改善の判断材料を整理します。社内AI導入を代行するサービスではなく、誤情報の解消・推薦・売上増加を保証するものでもありません。
自社の見え方を確認したい方は、AI企業健康診断の専用ページからご相談ください。調査範囲・料金・契約条件はお申込み前に確認します。専用ページに案内される無料の内容と、有料監査の適用範囲も分けてご確認ください。